故人様からのお手紙
栄子様⦅故人様(仮名)⦆は優しく明るいご性格で、栄子様の周りにはいつもお友達のみんなが集まってきては、尽きないお話に花咲かせ笑顔に満ちた日々を送っていらっしゃいました。
しかしそんな日が続くと思われていた最中、体調を崩し入院生活を送ることになり、私がご依頼をいただき病院にお迎えにあがった時、喪主様は「もう覚悟していたことなので、気持ちの準備は出来ています」と落ち着いて仰いました。
病院からご自宅に帰ると、ご親戚の方以外にもご友人の方もすでに駆けつけていらっしゃいました。
「本当に友達の多い人だった」
「いつも栄子さんのところに集まっては甘酒を一緒に飲んでいたの」
「集まるのが楽しみだった」
とお集りの方々が想い出を語られる口調や雰囲気で、栄子様がいかに周りの方に愛されていたか、そのお優しく社交的なお姿が思い浮かびました。
そしてご葬儀当日。
開式前に一通の葉書が届きました。
送り主はなんと栄子様でした。
体調を崩されてから時間が経つにつれ、ご自身の最後が近いことを悟られているようなご様子だったそうです。
ご入院先でお知り合いの方に手紙を託していらっしゃったのです。
すぐに喪主様にお知らせし、代読させていただくことをご提案したところ、「お願いします」との事でしたので、お式の最後に代読をしました。
「私は九十二年も生かされて来ました。数知れない友達と仲良くしてもらい本当に幸せと思います。有難うございます。あたえた恩は忘れてもあたえられた恩は忘れずに天国まで持って行きたいものです。最後に皆さんありがとう」
栄子様最後のお言葉に喪主様をはじめ、ご親族の皆さま、会葬の皆様全員が涙を流されていました。
お別れの際には想い出を語り合いながら、お好きだった甘酒をいつも集まっていらっしゃったご友人のみなさんとご一緒にお口元に運んでいただきました。
思わぬ最後のサプライズ。
染み入るメッセージのプレゼントに、ご当家様だけでなく私たちの心にも残るご葬儀となりました。