結婚記念日
故人様の奥様は膵臓癌を患っていらっしゃいました。
手術予定日がご葬儀の翌日で、当日は準備・検査でご入院されるため、ご主人様のお見送りが出来ない事態となりました。
病院に手術日の変更の問い合わせをしましたが厳しいというご返答です。
手術前で不安なお気持ちでいらっしゃるのに、さらにお見送りが出来ないことが心のご負担とならないように、一緒に居られる最後の貴重なお時間をどうお過ごしいただけるか…
喪主様や娘様からお二人のエピソードを沢山教えていただきました。
いただいた『ものがたり』は、
「6月1日が結婚記念日であること」
「結婚記念日にはいつも故人様から奥様に対してバラの花束を渡していたということ」
「いいちこをいつもそのままストレートでお飲みになられていたこと」
「報恩寺の写経会に2人で参加されていたこと」
「千畳敷によく2人で行かれていたこと」
というものでした。
そこで、結婚記念日には少し早いですが、お通夜の前に【結婚記念日お祝い会】を開きましょうというご提案をしました。
お二人の為にどんな結婚記念お祝い会が出来るかご家族とお話する中で、いつも故人様からバラの花束を贈られていたのなら、今回は奥様からご主人に花束を贈ってもらおうということになりました。
ご準備したのは花言葉が「感謝」であるカーネーションと毎年贈られていた想い出のバラ。
それは奥様だけでなくご家族の愛情と感謝を集めた花束です。
いいちこはご当家よりいつも飲んでいたものを準備していただき、千畳敷の風景の写真をご用意しました。
式場では遺影のモニターに「結婚51周年」のお祝いメッセージを映し出し、通夜会場は結婚記念祝いの会場となりました。
「お経を書いたものを渡したい」という奥様のご希望から、奥様手書きのお経を書いた折り紙で鶴を折っていただきました。
(お手紙のご提案もしたのですが恥ずかしいとのことで書かれませんでした)
通夜の1時間半前、お近い方が集まって結婚記念日お祝い会のスタートです。
感謝の花束をご主人へ送っていただき、千畳敷のお写真をお棺に入れ、いいちこで最後の晩酌をしながら、ご家族でゆっくり故人様との思い出を語る時間を過ごしていらっしゃいました。
その後お通夜を営まれました。
お通夜が終わって入院準備のためご自宅へ帰られる前に、奥様から笑顔で「こんなことまでしてもらえると思いませんでした。本当にありがとう。みんなから元気と励みを貰ったから手術も頑張れそうです!」というお言葉をいただきました。
奥様のそのご様子にご家族の皆さまも安心された笑顔がこぼれ、スタッフも心が温かくなったお式でした。
奥様の手術は成功したそうです。
スタッフ一同本当にホッとしました。